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だが、じつはクロロフィルが光合成をおこなう過程で、大量の活性酸素が発生するのだ。
本来、クロロフィル自体には活性酸素を消去する強い働きがあるのだが、それだけでは間に合わず、植物は、ビタミン類やカロチノイド類をつくりだし、組織内に発生した活性酸素をコントロールしている。 だから、植物の中でカロチノイド類がもっとも多く集まるのは、クロロフィルの多い葉や実の部分である。
秋になるとそれまで緑色だったモミジが真っ赤に紅葉したり、イチョウの葉が黄色くなるのはそのためだ。 クロロフィルがもっとも活発に光合成をおこなって、さかんに活性酸素が発生している部分に、カロチノイド類がより多く集まってくるのだ。
ところで、おもしろいことに、トマトは、より陽射しが強く乾燥した地帯で育てると、同じ品種でもずっと赤くなる。 強い太陽の光のもとで大量に発生する活性酸素から種子を守るため、果実にリコピンが多く集まり、赤くなるというわけだ。
トマトにかぎらず、ナンテンやピラカンサなど、木の実や果肉には、赤色や黄色のカロチノイド類が凝縮されているものが多い。 これは、赤色や黄色など、緑色の葉の中にあって目立つ色をディスプレイすることで、鳥や動物に「もう食べられますよ」と、果肉が熟したことを伝え、食べられることによって、実の中に含まれる種子を遠くまで運んでもらい、テリトリーを広げることを意図してのものといわれている。
また、蜜を吸いにきた虫が花の中を動きまわることによって受粉する虫媒花には、赤色や黄色のカロチノイド類がたくさん含まれているものが多い。 これも、昆虫の注意を引きつけるためのディスプレイだといわれている。

昆虫の眼は紫外線を感じることができるので、人間よりもずっと敏感に赤色や黄色に反応するからだ。 植物というものは調べれば調べるほど不思議で、まるで意思があるかのように思えてくる。
ラフレシアのように、ハエが好きな腐肉のにおいを出してハエを集めて受粉するものもある。 また、オーストラリアには、ある種のハチの雌とそっくりのかたちをした花をもつ植物がある。
雄をだまして花にまつわりつかせ、花粉を受精しようというのだ。 まるで計算したかのような驚くべきトリックである。
植物のメカニズムはいたって合理的でムダがない。 植物がつくりだしているさまざまなカロチノイド類は、活性酸素を消去すると同時に、生殖の際に虫や動物にアピールするための色素としても利用されているのである。

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